マッサージは「1分100円」、つまり60分なら6,000円などと言われた時代はとっくに終わり、60分2,980円など相当安いお店が目立つようになってきました。まあ私はマッサージ屋ではありませんので、そんなことはどうでもよいのですが、ここではその「マッサージが強かった場合、体には良くないかもしれない?」と言う話をしたいと思います。
では筋肉の勉強から参りましょう。図2には筋肉(正確には骨格筋)の絵が、そして図1にはそれを図式化したものが載せてあります。
まず骨格筋なんですが、骨格筋は複数の筋線維が集まって構成されます。この数に関しては筋肉の大きさによって異なるため何とも言えませんが、筋線維一本は直径50~100μm(ミクロンメートル)であると言われています。
100μmというのは0.1mm(ミリメートル)ですから筋線維が相当細い事がご理解いただけるかと思います。
しかしそんなに細い筋線維なんですが、それ一本はなんと1000~2000本の筋原線維によって構成されているんですね。ほんと細かい話です。
更に話を進めましょう。とにかく筋肉を構成する最小単位?である筋原線維なんですが、その表面は図2にありますように、筋小胞体と言われる網のようなものに包まれた状態にあります。
ではここから筋肉が収縮と弛緩をする仕組みを説明します。
まず脳から筋肉に「収縮しろ!」という命令が送られると、筋小胞体からカルシウムイオン(Ca2+)が放出されます。するとこのカルシウムイオンの影響を受け筋原線維が収縮を起こし、これが筋肉の収縮となります。
そして脳からの命令が送られなくなると、筋小胞体は自身がもつカルシウムイオンの取り込み機能(能動輸送)によって、それらを小胞体内に引き戻します。そして筋肉には弛緩が起こります。
これが正常な状態なのですが、何らかの理由により、こうした機能が正しく働かなくなることがあります。
筋小胞体を袋だとして考えて下さい。例えばその袋に、おもちゃでもお菓子でもなんでも良いので入れてみてください。袋が破れていなければ、それらを収めておくことはできますが、その袋が破れていたらなら、入れたものをそこに留めておくことはできませんよね。これと同じことが筋小胞体にも言えるのです。
つまり何らかの理由により筋小胞体が破壊されると、いくらカルシウムイオンを取り込んだとしても、それが破れた穴から出て行ってしまうため、結果として筋肉には、収縮(緊張)状態が続くことになるのです。
さて、お分かりいただけましたでしょうか?これが強揉みマッサージが悪いと言われる原因だと思われます。
ちなみに、こうした筋肉の収縮(緊張)状態は血流にも影響を及ぼし、痛みや疲れなどの原因にもなります。
みなさんがマッサージに行くその目的は何でしょう?「癒やし」ですか?それとも「疲れをとる」ためですか?
まあなんであれ、どうせ同じ金額を払うなら強く揉んでほしい!と言う方もみえると思いますが、そうした強いマッサージは、場合によっては筋小胞体を破壊し、かえって硬い体をつくってしまう恐れがあるようです。
私はマッサージの否定はしません。「治療」であれ「リラクゼーション」であれ、それに効果があると思うからです。しかし筋肉の構造を考えますと、その力加減は考える必要があるようです。
まあそうした施術を受けた時に強いと感じるか弱いと感じるか、また痛いと感じるか心地良いと感じるかは個人の感覚ですから、どのくらいが正しいという基準はつくれないと思うのですが…、ということは受け手であるお客様が満足できれば正解なんですかね?
追伸
いぜん私の所にみえた女性の首に青あざがありましたので「何かしたんですか?」なんて聞いたことがあったのですが、返ってきたのは「リンパマッサージに行ってきた」ということでした。そして「あれを受けると、とても痛くて毎回あざができる」ですって。
そもそもリンパというやつは比較的表層にあるわけですから、マッサージにそこまで強い圧は必要ないと思いますし、この場合のアザって皮下出血でできてるわけですから、それができたらダメでしょ!なんて思ったのですが、その方は担当者から「悪いから痛い」、「悪いからアザができる」などと説明されているようで、それを信じてみえるようでした。
たしかに私も「悪いから痛い」と言うのはあることだと思いますが、「悪いからアザができる」というのはどうかな?なんて思ったのでした。
※この記事ではマッサージにより副交感神経が優位になって起こる可能性のある筋の弛緩は考慮しておりません。ご了承下さい。