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ストレッチが害になるかもしれないその理由を説明します

 ある女性(以下Aさん)が膝窩部(膝の裏)の痛みで来院されました。Aさんは週3~5日のランニングとストレッチを習慣としてみえるのですが、その痛みは日頃から軽度にあり、ランニングと腿の裏(ハムストリング筋)を伸ばしたとき(ストレッチをしたとき)に特に感じるというものでした。(ハムストリング筋は下図をご参照下さい)

ストレッチが害になるかもしれないその理由を説明します 私は各種検査を通して患部を特定し、そこへの負担を減らすことを目的に、とりあえず1週間、ランニングとストレッチを控えていただくことを提案したのでした。

 関節や筋肉など体の何処かに炎症がありますと、そこに何らかの負担がかかることで痛みを誘発もしくは悪化させます。しかし一旦それが治まれば痛みが起こりにくい状態になります。
 たとえば怪我をして腫れたとしましょう。そこには炎症が起きているわけですが、そうしたところは触れば痛いですよね。しかし腫れが治まり炎症が落ち着けば、触ったところで何ともありません。それと同じです。ですから一度、患部への負担を減らしていただき、痛みを完全に無くそうとしたわけです。

 しかしここで問題がおきました。Aさんはランニングこそ控えると言って下さったのですが、ストレッチは続けたいと言われるのです。まあAさんが「ストレッチはとても良いもので、それをしているから怪我が少ない」と強く思ってみえた事がその理由なのですが、痛みを誘発するそれを、わざわざ続ける意味があるのでしょうか?

 答えはもちろんNoです。

 ストレッチといえば身体に柔軟性をつけるために有効。そしてその結果として怪我の予防になったり、運動機能を高めたりと良い効果が得られると思ってみえる方は多いですが、一概にそうとも言えないのです。

 まずAさんのケースですが、ストレッチによって痛みが誘発されるということは、それ自体が火に油を注ぐ行為、つまり痛みの継続因子となっている恐れがあります。更に問診を通して私が思ったのは、ストレッチ自体が痛みの原因になっているのではないかということでした。確かに拘縮している筋肉に対しては私もストレッチは有効だと思います。しかし過度に伸ばせば、それは筋肉を引き伸ばし損傷させているに他ならないのです。

ストレッチが害になるかもしれないその理由を説明します たとえば日頃からデスクワークで猫背の人がいたとします。これは図1を見ていただきましょう。腰は本来、図2の様に前にカーブしていた方が良いのですが、後ろにカーブし、その周辺組織(筋肉など)が伸ばされていたとします。
 こうした状態の腰を図3のように更に伸ばせば、これが損傷の原因となります。もしその段階で損傷があり痛みが起きていたのであれば、それを悪化させる恐れすらあります。

 しかし残念なことに、そうした状態で腰に痛みがあったとしても、何故かストレッチをして伸ばしたほうが良いと思っている方は多くみえるようで…。

 ではどうすることが正解となるのか?

 伸ばされて痛みが起きているのであれば、伸ばさないようにすることが正解となります。ですからデスクワークで腰が伸ばされ痛みが起きているのであれば、図2のように正しい姿勢(腰が前に反れた状態)をとり、腰のカーブを維持することが痛みを改善させる方法となります。

 また正しい姿勢をとるためには筋肉を使う必要があるのですが、そうして筋肉を使うことにより、筋機能が向上し、これが腰痛の予防につながります。

 いかがでしょう、ご理解いただけましたでしょうか?

 実際ストレッチに関しては、知られていないだけで、それを否定する多くの研究結果が報告されています。
 たとえば準備運動として行うストレッチには、怪我の予防効果が無いどころか、それをすることにより一時的に筋肉の収縮効率が悪くなり、それこそ一時的ではありますが瞬発力や筋力が低下するというのです。
 また気温が低いときには、ストレッチをすることにより体が冷えてしまうため、これが怪我を誘発する原因になるというのもあります。

 筋肉をはじめ各種関節を安定させています軟部組織は、冷えや同一姿勢の継続によって固くなります(伸張率を低下させます)。そのため体が冷えたときやデスクワークなどで同一姿勢を継続した後に、いきなりしっかりとした伸びなどをしますと、大げさな話、軟部組織に断裂を起こすこともあるのです。ですから朝に目が冷めて、布団から起きる前にグッと体を伸ばす方もみえるかもしれませんが、そのタイミングで大きく伸びをするのも上記の理由からあまり良くないと言えるのです。

 ストレッチは拘縮した軟部組織(筋肉など)に有効、もしするのであれば体が冷えたりなんかして固くなっていないときに行う。そこらを覚えていただけたら良いかと思います。

ストレッチが害になるかもしれないその理由を説明します 追伸
 今はどうか分かりませんが、私が学生の頃は左図のように二人一組になっての柔軟体操を割としていた記憶があります。
 押さえる側は十分に伸ばしてやろうという思いからか必死に押さえ、伸ばされる側は危険を認識してかそれに抵抗し…。

 危険のポイントはすでに話してしまいましたが、そうして二人で行うストレッチも、かなり注意しないと害になります。

 二人で行うストレッチというのは基本的に伸ばされる側の力が抜けていることが前提となります。その上で、押さえる側が受け手に力が入らない程度のスピードで適度な力を加えることによりその目的が達成されるわけですが、押さえる側がそうした配慮なく受け手に力を加えますと、それこそ受け手の体には防御反応として力が入ってしまい、ここに受け手と押さえ手による力比べ状態が発生します。そして、もちろんこれは怪我の原因となります。

 ストレッチを正しく行うことは難しそうですね。
   

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