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骨盤に起きる一般的な問題(損傷・可動域異常/歪み・ズレ)を解剖学的に考える

 以前テレビで「骨盤の歪み」を取り上げていたことがあったのですが、ここではそうした骨盤の問題について説明させていただきたいと思います。

骨盤に起きる一般的な問題(損傷・可動域異常/歪み・ズレ)を解剖学的に考える ではまず解剖学から参りましょう。
 骨盤というのは中心に位置する仙骨と、その両サイドに位置する寛骨の総称で、それらが仙腸関節と恥骨結合によって連結され構成されています。(図1参照)

 仙腸関節というのは仙骨と腸骨(寛骨の一部)によって構成されることからその名前がついています。ここは不動関節、つまり動きのない関節と言われていたこともあるのですが、0.2~2°程度の回転運動と1~2㎜程度の並進運動が可能であることから、今は可動関節と言われるようになっています。

 対して恥骨結合は、両寛骨の下端部分(恥骨)と、その間に挟まれるように位置する恥骨間円板によって連結され、約3°の回旋と最大2㎜の並進運動が可能となっています。

 まあ可動域を見ていただければ分かるかと思うのですが、骨盤の繋ぎ目である仙腸関節や恥骨結合には、肩関節や膝関節のように大きな動きはありません。ですから骨盤というのは可動性ではなく、体幹の土台として安定していることが重要であると言えるでしょう。

 さて、ではこの骨盤部にどのような問題が起きるかという話なのですが、これには主に「関節およびその補強構造(靱帯)の損傷」と「可動域の異常」、そして「関節のズレ」が挙げられるかと思います。

 関節およびその補強構造(靱帯)の損傷は怪我みたいなものですから、それ以上説明することはないのですが、可動域の異常と関節のズレに関してはしっかりと語りたいと思います。

 まず可動性の異常ですが、これは可動性の亢進と可動性の減少に分けることができます。
 可動性の亢進は、それこそ仙腸関節の補強構造である靭帯の損傷に伴って起きることが多く、こうした場合は仙腸関節の不安定性から、関節面の捻挫のような問題に移行することも考えられます。
 また可動性の亢進は、妊娠などに伴う靱帯の緩みによっても引き起こされるのですが、これもまた仙腸関節に痛みを起こす原因となります。

 対して可動性の減少は同一姿勢の継続によって起きることが多く、こうした状態は関節における衝撃の分散機能に影響をきたすため、これもまた痛みの原因として考えることができるかと思います。

骨盤に起きる一般的な問題(損傷・可動域異常/歪み・ズレ)を解剖学的に考える TVをつけていますと腰痛の専門家を名乗る人が出てきて、それこそ「仙腸関節に動きがないことが痛みの原因になる」などと言って、腰痛患者の骨盤部をグイグイ押さえているのを見ることがあるのですが、そんな感じです。

 しかし仙腸関節における可動性の減少が、どのくらい痛みの原因になるのかは実際よく分かりません。

 これは仙腸関節が安定性を売りにしていることもあるのですが、ある専門書では「加齢とともに関節包は次第に線維化して柔軟性と可動性を失う。男性では比較的早期に、女性でも閉経後に線維性癒着が診られる。80歳までには、場合によっては完全に仙腸関節の骨化に至る。人類学者は検体の推定年齢を判定するための信頼できる方法として、仙腸関節を一般的に利用している。」とあり、仙腸関節における可動性の減少を老化現象だとするなら、それを痛みの原因として考えることに疑問が起きてくるのです。なぜならそこに可動性の減少が起きているであろう年齢の方たち全てに、仙腸関節痛があるかといえば、そうでもないからです。

 まあ私が仙腸関節痛の患者様を診るときは、触診や可動域検査を用いてその状態を判断するのですが、私の施術経験では、可動性の亢進(関節の不安定)が痛みの原因になっていることが多いように思います。ですから先に述べました「テレビに出ていた自称腰痛の専門家」とは多少異なる考えをもっていることになるんでしょうね。

 では可動性の減少はどうかといえば、痛みがなく何らかの運動異常を訴える方には、この可動性の減少が起きていることが多いように思います。これも私の経験から話しをさせていただきますと、

など、痛みはないため生活に支障もないのですが、こうした運動の異常を訴えられた皆様には、可動性の減少が起きていたと私は思っています。実際、上記の状態を訴えられた皆様は、骨盤の矯正によってそれらの問題を改善されていますから。
 ちなみにこうした状態が、テレビなんかで取り上げられています「骨盤が歪んでいる状態」になるのだと思います。

骨盤に起きる一般的な問題(損傷・可動域異常/歪み・ズレ)を解剖学的に考える そして最後に関節のズレなのですが、ある専門書では「仙腸関節というのは思春期から青年期にかけて可動関節から一種の半関節に漸次変化する。加えて特筆すべきことは、滑らかであった関節面が凹凸になることである。成熟した仙腸関節の表面には、骨や関節軟骨にまで相反性に深く刻み込まれた無数の凹凸がある」などと紹介されています。(図2参照)

 上記にある半関節というのは、「平面関節の一種ではありますが、関節面が平面ではなく、しかも適合性が高いため、運動範囲が平面関節よりも制限された関節」のことを言い、これはつまり仙腸関節のことを言っているのですが、私はそんな関節面にズレが起きることがあると考えます。

 これは転倒などに伴う強い衝撃や偏った姿勢の継続、または可動性の亢進(関節の不安定)などによって起きることもあり、わりと強い痛みを伴うことが推測されます。
 そしてこの関節のズレは、それを適切な状態に戻すことで痛みの軽減がみられます。まあ関節面などには炎症が起きていることも予想されるため、痛みがいきなり0になることはないと思いますが、それでもわりと楽になることだと思われます。といいますか私が関節にズレがあるとして診た方たちはそうでした。

骨盤に起きる一般的な問題(損傷・可動域異常/歪み・ズレ)を解剖学的に考える これに関して言えば腰痛(この場合は仙腸関節部痛)がある時に、左の絵のように、立って腰辺りに手を置き、骨盤を時計回りとか反時計回りに回していたら痛みが改善した!などという経験がある方はみえないでしょうか?そんな感じです。

 まあなんであれ仙腸関節の痛みは腰痛の6割を占めるという考えがあるほど大きな問題ですから、それに対して「どこまで適切なアプローチができるようになれるか」ということが私たち施術家の課題であると思います。

 骨盤(主に仙腸関節)に起きる一般的な問題について説明させていただきました。
   

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