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画像診断に写らない問題を如何に対処するか1(関節編)

 頚や腰など身体に痛みがあるというのに、レントゲンやMRIなどの画像診断に異常がない場合、その痛みの多くは「関節や筋肉(骨格筋)、そして神経や内蔵から起きている(他に心理的、精神的な問題も考えられる)」ということは別の記事に書いたのですが、ここではそうした画像診断に写らない問題にはどのようなものがあるのか、そしてそうした問題に対してどう対処するのかを、ざっくり説明させていただきます。(→別の記事『整形や接骨院の治療は、時に十分ではないと思います』はこちら

 まずは関節の問題。骨の変形や脱臼dislocation(正確には完全脱臼complete dislocation)、または関節を補強している靱帯などの断裂は病院でも確認されることだとして除外した場合、痛みの原因として考えられる関節の問題には「骨のズレ」、「関節間の癒着」、そして「関節包や靭帯など関節を補強する軟部組織の拘縮もしくは伸張(微細損傷)」などがあるかと思います。
 では、下になんとなくまとめてみましたのでご覧ください。

痛みの原因として考えられる関節の問題 対応
骨のズレ(亜脱臼incomplete dislocation) 矯正、周辺構造へのアプローチ
関節間の癒着 矯正、モビリゼーション
関節補強構造(関節包や靭帯)の拘縮 ストレッチ・リリース
関節補強構造の伸張(微細損傷) サポーターなどによる可動制限

骨のズレ(亜脱臼incomplete dislocation)に関しては図1にありますが、これは「骨が正しい位置にない、しかし関節面には部分的な接触が残っている状態」です。

 これは肩(肩甲上腕関節)や膝(膝蓋骨)において診られることが多いのですが、こうした状態で関節を動かしますと、局所的に負担の掛かるところができてしまい(図1の赤い矢印が示す部分)、これが痛みの原因となります。この場合は関節の矯正や、そのズレに影響を及ぼしている周辺構造(靱帯、筋肉など)にアプローチすることが有効となります。 

画像診断に写らない問題を如何に対処するか1(関節編) 次に関節間の癒着。これは特に背骨(正確には脊柱の椎間関節)で診られる事が多いのですが、例えば長時間のデスクワークなどにより同一姿勢を継続していたりしますと、関節間に癒着という現象が起こり、関節の動きを制限してしまいます。

 テーブルの上に水をこぼし、その上に吸盤を置いた状態を想像してみてください。図2の左側がそれにあたるのですが、その状態でしたらテールブルと吸盤の間に水の層があるため、吸盤はわりと滑らかに動くことができます。しかしその状態から一度、図2の右側のように吸盤をテーブルに押し付けてみてください。すると吸盤とテーブルの間の水が押し出され、吸盤はテーブルにくっついてしまいます。そんなことが関節(特に脊柱の椎間関節)には起こるのです。

 関節は適切な可動性を有すことで、そこに掛かる負担を軽減しているのですが、可動性が制限されると、そうした機能も低下するため、そこに過度の負担が掛かり、これも痛みの原因となるのです。

 また可動性の制限がある場合、その付随構造である関節包や靱帯にも拘縮(短縮)が起きている恐れがあるのですが、運動の際にこれらが伸ばされることも、また痛みの原因となります。(関節包や靱帯の拘縮(短縮)から関節の癒着が起きることも考えられます)

 更に一部の関節に可動制限がある場合、その代償として(制限れた分の動きを補うために)周辺の関節に過剰な動きが起き、これに伴う関節包や靭帯の過剰な伸張が痛みの原因となる場合もあります。これは図3を参考にして下さい。可動性を消失した関節(図3の赤い×部分)の動きを、その一つ上の関節で補っているのが示してあります。
 といろいろな状況が絡み、痛みを誘発する恐れがあるのです。しかし、こうした問題はレントゲン等の画像診断には写りません。

 ちなみに関節間の癒着には、矯正やモビリゼーションと言う名の関節運動療法を用いて、関節に動きを出すことが有効となります。また関節補強構造(関節包や靭帯)の拘縮にはストレッチやリリースと言われる方法を用いて、拘縮した組織に柔軟性をつけることが治療となります。また可動制限の代償として痛みが起きている部位に関しては、テーピングやサポーターなどを使用して可動を制限することも有効ですが、その原因となる「可動制限の起きている関節」を矯正なんかしまして、その動きを改善することが重要です。代償的な問題(痛み)であるなら、原因を叩けば改善されますから。

 ということで画像診断に写らず、痛みを起こす恐れのある関節の問題を取り上げてみたのですが、他にも椎間板や半月板、関節唇に関節円盤なども痛みの原因になると考えられます。まあこんな情報を通して、「自分の身体の痛みがなんとかなるかもしれない!」と思っていただけたら幸いです。
 では次の記事では、筋肉(骨格筋)の問題を考えてみましょう。
   

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