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脚長差(脚の長さの違い)が起きてしまう原因とその改善法を考えよう

 みなさんは整体なんか行きまして、そこで「脚の長さが左右で違う」などと指摘されたことはないでしょうか?ここではどうしてそのような事が起きてしまうのか、またそれに対してどのような対応ができるのかを考えてみたいと思います。

 まず脚の長さが変わってしまう主な原因なのですが、「骨盤の歪み」と「筋肉の問題」、そして「骨の形成異常」が考えられるかと思います。

脚長差(脚の長さの違い)が起きてしまう原因とその改善法を考えよう 骨盤の歪みに関しては、これは左の図を見ながらまいりましょう。骨盤というのは、その中心に位置する仙骨と両サイドに位置する寛骨を合わせたものを言います。(図1参照)

 そして、例えば人が立っている時、脚の付け根である股関節に対して骨盤の繋ぎ目である仙腸関節は後方に位置します。(図2参照)

 そのため股関節部には床からの反発力(床反力)が掛かるのに対し、仙腸関節部にはそこより上部の荷重(体重)がかかってきます。この結果として骨盤(寛骨)には後方に傾く動きが起こります。

 まあこうした状態があったとしても、左右の関節(特に仙腸関節)に対して均等に体重が掛かるのであれば、骨盤が歪むようなことはないのもしれませんが、これに立つときの癖(どちらか片方に体重をかけて立つ)などが関与しますと、より体重のかかる側の寛骨が後方に強く傾くことになってしまいます。(図3、4参照)

 すると寛骨が後方に強く傾いた側では、仙腸関節の位置が引き下げられてしまうのですが、これは仙骨の側方への傾きと、それに伴う背骨の側弯(側方への歪み)の原因になると考えられます。(図5参照)

 まあこれは骨盤の歪みが背骨に影響を及ぼすという話なんですが、こうした状態をもって、うつ伏せや仰向けになり脚の長さを比べてみますと、寛骨が後方に傾いた側では、今度は股関節の位置が引き上げられるかたちとなります。するとこれにより脚の長さが短くなる(短下肢)状態が起こるのですが、それに伴い、そこに脚長差leg length discrepancy(脚の長さの違い)が確認できるようになるのです。

 また骨盤の歪みに関しては、脚を組む癖のある人にも診られます。これは図6を見ていただきたいのですが、脚を組みますとそれにより上にした側の寛骨が後方に傾く傾向があるのですが、それが骨盤の歪みから短下肢・脚長差の原因となります。

 次に筋肉の問題です。これは特に拘縮が分かりやすいかと思うのですが、例えば腰痛などにより片側の腰部の筋肉が強く拘縮し、その距離を短縮させたとします。するとその筋肉の短縮が骨盤を引き上げ、その分の短下肢・脚長差が発生することになります。

 最後に骨の形成異常ですが、これは例えば骨の成長過程における問題や骨折などにより、骨自体の長さが左右で違っている状態を考えて下さい。
 先に説明しました骨盤の歪みや筋肉の問題は、基本的に骨の長さが左右同じである事が前提となる話なのですが、これに関しては骨の長さが違うわけなので、ちょっと厄介だというのがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 さて、ここでちょっと脚長差の原因となる短下肢を分類したいのですが、骨盤の歪みや筋肉の拘縮のように、骨の長さには問題がなく、日頃の姿勢や痛みなどの代償として起きる短下肢を機能的短下肢と言います。対して骨の形成異常のように、骨自体の長さが違って起きる短下肢を解剖学的短下肢ですとか構造的短下肢などと言います。

 では次に、それぞれの対処法にまいりましょう。

 まず骨盤の歪みに関してですが、これは立った状態で腰に手を置いたりしまして、腰を時計回りや反時計回りに回す、または前後左右に振るような運動をすることで、わりと改善することができます。
 また、片側に体重をかけて立つくせのある人であれば、逆側に体重をかけて立つように意識してみるですとか、いつも同じ側にかばんを持つくせがある人であれば反対側で持つようにしみるなど、逆側を使うことでバランスが取れたりもします。
 よく脚を組むくせのある方で、例えば右を上にして組むのは楽ですが、左が上だと組みにくいと言われる方もみえますが、この場合も骨盤に多少の歪みが起きている可能性があります。そうした場合には、あえていつもと逆の脚を上にして組んでみましょう。そうして逆を使うことにより、骨盤の歪みを正すことができます。
 ちなみに、もし皆さんが手技でそれを改善しないといけないようなことがあったなら、傾いている寛骨に対し、それを戻す方向への圧を加える事で改善させることができます。

 次に筋肉の問題なのですが、筋肉の拘縮が短下肢・脚長差の原因になっているのであれば、その拘縮した筋肉に柔軟性を取り戻すことが有効となります。ですからホットパックや入浴で患部を温めたり、ストレッチで伸ばしたり、また運動で動かすことも有効です。また、誰かしてくれる人がいるのであれば、適度なマッサージも有効です。

 最後に骨の形成異常なのですが、これは骨自体の長さが違うわけですから、もしすることがあるとするなら、足底板(インソール)や履物(踵の高さ)を調整するなどして、脚長差を埋めるようにすることが有効だと考えられます。

 いかがでしょうか、脚長差についてご理解いただけたでしょうか。
 ただここで少し考えていただきたいことがあります。それが何かといえば、脚長差の治療は絶対に必要か?ということです。

 私は仕事柄、整体などで脚長差を指摘され、「定期的に通って治さないと大きな問題になりますよ」などと言われたことがある人を何人も知っていますし、またそうした事の書いてあるホームページが沢山あることも知っています。

 しかし、身体にはゆとりといいますか許容範囲みたいなものがありますので、多少の脚長差があったとしても、それが絶対に痛みなど問題の原因になるかと言えば、それは分からないのです。
 実際、「無症状の人の約半数に5ミリ以上の解剖学的短下肢・脚長差がある」ですとか、「2センチ以内の脚長差であれば、それを埋める必要はない」などという報告もあるようですし…。

 もちろん私も、片側に体重をかけて立つ癖や脚を組むような癖があるのでしたら、それは直したほうが良いとは思いますよ。わざわざ骨盤を歪めるようなことはしなくてもよいと思いますから。しかし脚長差があるからといって、それがすべて治療すべき問題かといえば、そうではないと思います。

 それこそ先に書きましたように、「骨盤の歪みや筋肉の問題に伴う短下肢・脚長差は、基本的に骨の長さが左右同じである事が前提となる話」ということと、「無症状の人の約半数に5ミリ以上の解剖学的短下肢・脚長差がある」という報告を合わせて考えてみますと、整体なんかで脚の長さを揃えることで、逆に骨盤などに歪みが起きると考えることもできるのではないでしょうか。

 言い方を少し変えてみますと、整体屋さんがよく脚の長さの違いを指摘し、それを矯正なんかで治してくれたりするのですが、あれって「脚の本当の長さ」を確認した上でやっているんですかね?もし、脚の長さに左右差があるのに、それを知らずに脚の長さを揃えるようなことがあるとしたなら、それは脚の長さが揃った分だけ他の部分(骨盤など)が歪んでしまっていると考えることができるのではないでしょうか?

 まあとにかく、わけの分からない整体師に騙されないように注意していただきたいものだと思います。

 最後になりましたが、短下肢があればその逆側は相対的に長下肢になるのですが、人が生活を送る中では脚に縦方向の圧(短下肢をつくる力)が掛かることはあっても、牽引(長下肢をつくる力)が掛かることはほとんど無いため、短下肢側に問題があると考えるのが一般的になっています。ご了承下さい。
   

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