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関節の可動域異常(可動性亢進・可動性減少・可動性消失)を考えよう

 人体に動きをつくるために、なくてはならない構造が関節である。そして関節は、そうした大役を担うがために痛みという名の問題を起こしやすい部位でもある。ここではそんな関節に起きる可動域異常という問題を考えてみようと思う。

関節の可動域異常(可動性亢進・可動性減少・可動性消失)を考えよう 可動域異常は、可動性の亢進と可動性の減少、そして可動性の消失に分類することができます。

 可動性の亢進は強いストレスや繰り返されるストレスなどによって、関節補強構造である関節包や靭帯が損傷・伸張されることによって起こります。
 こうした関節包や靭帯の問題は、これ自体が痛みの原因になりますが、更に関節の安定性を低下させてしまうため、それに伴う運動機能の低下や、新たな痛みなどの問題を起こす恐れもあります。

 では可動性の亢進がある場合にはどのような治療をするべきかという話なんですが、関節に過剰な動きがあるのであれば、それを制限することが治療になります。

 具体的にはテーピングやサポーターなどを用いて、関節補強構造がより伸ばされないように、そして傷口が広がらないようにすることが大切です。

 また可動性の亢進は、代償作用として起きることもあります。
 これはどこかに痛みや可動域制限(可動性の減少・消失)がある、または偏った(歪んだ)姿勢などがあることが前提となるのですが、そうした問題がありますと、それを補うために可動性の亢進が起きることがあります。
 こうした場合ですと、テーピングやサポーターなどを用いて患部の可動域を制限することも治療としては有効ですが、それ以上に原因となる問題を治療することが重要です。

関節の可動域異常(可動性亢進・可動性減少・可動性消失)を考えよう では次に可動性の減少をみてみましょう。これは関節補強構造の拘縮や筋肉の拘縮、関節間における癒着や痛み、そして亜脱臼や神経の問題によって起きる筋力低下などが原因になるかと思われます。

 関節補強構造や筋肉の拘縮に関しては、同一姿勢の継続や運動不足、また損傷後などに起きる患部の癒着や、加齢に伴う変性などによって起きることがあります。

 こうした場合はなんであれ、関節補強構造や筋肉の拘縮を改善させることが治療となります。具体的にはストレッチやリリーステクニック、そして運動療法などが有効だと考えられます。

 次に関節間の癒着ですが、同一姿勢の継続などによって関節に動きがなく、そして圧の掛かった状態が持続しますと、そこに癒着という現象が起きることがあります。これは背骨に起きることが多いのですが、こうした問題がある場合、矯正などによってその癒着を剥離し、可動性を取り戻すことが治療となります。(関節の癒着に関しては『画像診断に写らない問題を如何に対処するか1(関節編)』も併せてご覧ください)

関節の可動域異常(可動性亢進・可動性減少・可動性消失)を考えよう そして痛み。痛いと反射的にそこをかばったりしますよね?これが可動域制限(可動性減少)の原因となります。痛みの程度によっては、そこまで影響しないこともあるのですが、ある程度の痛みがあれば、可動域を制限するとして考えてあります。

 まあこうして痛みがある場合でしたら、左の写真にもあります消炎鎮痛剤の服用や、消炎鎮痛作用のある貼り薬などを用いて、とりあえず炎症(痛み)を鎮めることが有効ですが、そうした痛み(炎症)を起こす原因があるのであれば、それに対しても目を向ける必要があります。

関節の可動域異常(可動性亢進・可動性減少・可動性消失)を考えよう 亜脱臼に関しては、これは関節を構成する骨のズレだと思って下さい。
 関節は2つ以上の骨(関節面)が向かい合って構成されるのですが、その関節面の接触が何かのタイミングでずれてしまうことがあります。すると正常な場合と異なる動きが起きるのですが、これが可動域の制限因子となります。
 左の図は、それこそ骨のズレを表しているのですが、そうした状態で関節が動けば、正常な場合と異なる動きをすることが理解できると思います。

 また関節は、向かい合う面(関節面)が適切に接触することで安定し、運動の軸となることができるのですが、亜脱臼状態ではその適合が正常でないため、運動の軸として十分に機能することができません。そのため筋肉の収縮が正しく関節を動かす方向に作用できない結果として、筋力の低下が起きると考えられます。
 これに関しては極端な例として脱臼をイメージしてみてください。関節が外れていれば運動の軸となるべきところがないわけで、そのためいくら筋肉質の人であっても、その関節を動かす事はできませんよね。そんな感じです。

 まあ脱臼に関しては病院に行きましょうか。で、亜脱臼(関節のズレ)に関しては、矯正が有効な治療となります。矯正によって関節を正しい状態に戻せば良いのです。実際、骨のズレによって腕が上がらない人が、肩の矯正一発で上がるようになる事はよくある話です。

 最後に筋力低下ですが、これは先に説明しました亜脱臼(関節のズレ)によって起きることがありますが、ケガなどによって安静にしているうちに筋肉が萎縮(廃用性萎縮)してしまい、その結果として起きることもあります。しかしどちらの場合にしても、可動域が減少するほどの筋力低下が起きるかといえば、普通そんなことはありません。ですのでこの場合の筋力低下に関しては、それを支配する神経(末梢神経)の問題を考えましょう。

 神経は各部の筋肉に枝を出しその運動を支配するのですが、その筋肉まで到達する過程で圧迫などを受けることがあります。すると筋肉に対して正しい情報伝達ができなくなり、これが筋肉の十分な収縮を阻害し(弛緩性の麻痺となり)、可動域の減少を起こすと考えられます。
 まあこの場合はもちろん、神経に対する影響を取り除くことが治療となります。

 さて、あと残っているのは可動域の消失なのですが、これに関しては脳卒中(中枢神経系の問題)などによって起きる痙性麻痺が分かりやすいのではないでしょうか。この場合ですと筋肉は硬直し、基本的に動き(可動性)は消失します。もちろん私には、今のところお手上げの領域ですね。

関節の可動域異常(可動性亢進・可動性減少・可動性消失)を考えよう いかがでしょうか。これらが可動域を減少させる原因だと考えられます。
 可動性が減少した状態では、そこに備わる衝撃緩和機能が低下するため、これもまた痛みの原因になる恐れがありますし、また、肩のように比較的荷重が掛からない関節でしたらどうかは分かりませんが、股関節や膝のように大きな荷重が掛かる関節では、衝撃緩和機能が低下すれば、それが骨の変形(変形性関節症)につながる恐れもあります。

 こうして考えますと、可動性は亢進しても良くないですし、減少しても良くないわけですが、なんであれ人は、運動不足や加齢などの影響から可動性が減少することが多いため、そんなことを考えましたら、やはり日頃から身体を開くように伸ばし、可動性の減少を予防することが大切だと私は思います。
   

→関連記事『画像診断に写らない問題を如何に対処するか1(関節編)』
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