コンテンツ・メニュー
Wataraiの主張Wataraiの主張

人の身長は一般的な生活をした場合、朝方に高く夕方に低くなる傾向がある

 私達が一般的な生活をした場合、この一般的というのは、夜に寝て朝起きる生活のことなのですが、そうした生活をした場合、身長は朝方に高く夕方に低くなる傾向があります。そこで、ここではそうなる理由を説明させていただきたいと思います。

人の身長は一般的な生活をした場合、朝方に高く夕方に低くなる傾向がある まずこれを理解するために背骨Backboneの解剖からまいりましょう。(図1参照)
 背骨は解剖学的には脊柱Vertebral Columnと呼ばれ、椎骨Vertebraeと呼ばれる複数の骨が連なって構成されています。
 それら椎骨は位置する部位により名称が異なり、頚に位置する7つを頚椎Cervical、背中に位置する12個を胸椎Thoracic、腰に位置する5つを腰椎Lumberと呼んでいます。そして、そこに仙骨Sacrumと尾骨Coccyxを含めたものが脊柱と呼ばれています。

 仙骨は出生時には5つの椎骨(仙椎Sacral)となっているのですが、それが成長に伴って癒合し一つの骨(仙骨)となります。同じく尾骨も出生時には3から5個の椎骨(尾椎Coccygeal)となっているのですが、これも成長に伴って癒合し一つの骨(尾骨)となります。
 ですので成人の場合は基本的に頚椎7つ、胸椎12個、腰椎5つに仙骨と尾骨を合わせたものが脊柱の数と言えるわけですが、解剖学ではなぜか癒合している仙骨や尾骨を一つと数えず、それぞれ5つとか、3から5つなどと数えるため、専門書では「脊柱は32から35個の椎骨によって構成される」などと書かれていたりします。不思議ですね。

人の身長は一般的な生活をした場合、朝方に高く夕方に低くなる傾向がある さて、更に解剖学を続けたいのですが、そうした脊柱(椎骨)の間には、椎間板Intervertebral discという構造が挟まれています。これは中心に位置する髄核Nucleus pulposusと、その周辺を覆うようにある線維輪Anulus fibrosusによって構成されるのですが、これが頚椎から仙骨までの間に23個あり、その23個分で脊柱の20から33%を占めるかたちとなります。(図2参照)
 まあこの椎間板がある意味はといえば、一般的に知られていますのが「脊柱にかかる衝撃の緩和」をするということですかね。しかしそれ以外にも、「椎骨の連結」ですとか「脊柱に動きをつくる」などの重要な働きも担っています。

 と、話は今回の題目である「一日における身長の変化」から離れているようにも思えるのですが、これでOK。ここから本題に迫ってまいりましょう。

 人が一般的な生活をした場合、朝起きてから夜寝るまでの間に横になる時間はほとんど無いと思うのですが、そうした場合、脊柱には立っていようが座っていようが、常に縦方向の圧(垂直圧)が掛かり続けます。するとその圧によって椎間板が徐々に潰れてしまうのです。

人の身長は一般的な生活をした場合、朝方に高く夕方に低くなる傾向がある 正確には垂直圧によって椎間板の支柱とも言える髄核から水分が染み出してしまうことが椎間板の潰れ(椎間板厚の減少)と、それに伴う身長低下の原因となっています。(図3参照)

 脊柱の20から33%を占める椎間板が、それぞれ少しずつ潰れることによっておきる身長(脊柱)の短縮は、「身長の平均1.1%」であるとか「一般的な身長の成人男性では約2㎝」とも言われていますので、けっこう大きいのではないでしょうか。

 そしてその潰された椎間板は、夜になって床につき(横になり)、脊柱(椎間板)にかかる縦方向の圧がなくなりますと、徐々に元の厚みに戻っていきます。

 これも詳しく説明するなら、横になり椎間板に縦方向の圧が掛からなくなると、髄核の内圧が比較的低い状態になるのですが、この低圧によって髄核に水分が取り込まれていきます。これには椎間板が親水性の性質(水と結合しやすい性質)をもつことも影響するのですが、こうして椎間板は元の厚みを取り戻すことになるのです。(図3参照)

 これが一日の内で身長に変化が起きる理由です。

 さて、ここからちょっとステップアップしてみましょう!
 椎間板も加齢によって変性を起こすのですが、これにより「水分を引きつけ保持する機能」が低下したりします。すると髄核の水分量は減少し、これに伴い椎間板厚も減ってしまうのですが、これが加齢によって身長が低くなる一因となっています。

 まあ加齢によって身長が低くなる原因には他に、「骨自体が萎縮すること」や、何らかの要因(筋力低下や関節の拘縮など)によって「関節を真っ直ぐ伸ばすことができなくなること」なども関与するのですが、とにかく身長は歳を重ねていきますと縮んでいくことになります。

 ちなみに椎間板厚が減少すればその機能も低下します。ですから「脊柱にかかる衝撃を緩和する機能」が低下すれば、関節に痛みを起こす恐れが増えますし、「脊柱に動きをつくる機能」が低下すれば背骨の可動域が減る、つまり身体が硬くなるという状態を起こすことになります。

 なんかこうして考えますと、歳を重ねることが辛く思えてくるのは僕だけでしょうか?

 ちょっと回りくどく、そして脱線したところもあったかと思うのですが、とにかくここでは一日の内で身長が変化する理由とそれに関係する話をさせていただきました。
 どんなことでも、その理由までしっかり理解しようと思うと、やはり解剖学のような学問が必要であるということが分かっていただければ幸いです。
   

→Wataraiの主張へ戻る

inserted by FC2 system